第1章

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 Zランク…………  聞いたことはあっても、正直喰らったヤツなんて見たことなかった……。 『此れが発動したら、それこそ本気で後がないからな』  研修期間中にそう言って笑ってた先輩は、今は俺の部下だ。  呼び出しを受けてから、何かやらかしたか必死で考えた。  重要顧客や案件をいくつも抱え込んでたから、どこでミスしても致命傷になりかねない。  最悪の事態を想定し、対応の優先順位を決める。  急いで向かった会社の様子は、少しだけ落ち着きを取り戻した俺の目には普段と変わらないように見えた。 「おはようございます、谷岡課長。  ……あれ? 直行で顧客回りじゃなかったでしたっけ?」 「ああ、ちょっとな……」  同期で部下の山瀬に、手だけ上げて挨拶代わりにする。何か知らないか聞きたいところだが、そんな時間は許されていない。  エレベーターに乗り込み、9階のボタンを押したところでジワジワと不安がわき上がってくる。  最悪の状況まで考えたものの、俺がミスをしたような気がまったくしない。  いや、想定できる程度の事態に対してZランクが発動するというのもおかしな話だ。  ……社長室で待っていたのは、社長と部長のふたりだけ。 「いったい、何が──」  俺の問いを遮るように投げ置かれたのは、A4サイズの小冊子が一部……。
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