第2章

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 ニュースが流れてから、会社は戦場になった……。  電話も鳴りっぱなし。押し掛けるマスコミ。もちろん俺のスマホも鳴り止むことはない。  謝罪の声と怒号が入り雑じり、通常業務なんてできるはずもない。  俺に突き刺さる社員たちの視線が痛い。  事態が収拾したら、もう俺の居場所はないな……。いや違う。事態が収拾する見込みさえあるのかどうか……。    ◆   ◆   ◆   ◆  ようやく、少しだけ落ち着いたのは、夜中の1時……。  みんなの視線が恐くて、俺は屋上に逃げたのだ……。  手摺にもたれかかり、胸から煙草の箱を取り出した。新品の箱はボロボロになってた。  震える手でフィルムを剥がし、口にくわえる。  お気に入りのライターは何処かに置き忘れたらしい。  やむなくどこぞのスナックのマッチを手に取るが、手の震えと強風のせいで、一向に火はつかない。 「────ああ、くそっ!!」  短気は損気……。  そんな言葉が頭を過るが、どうでもいい。  俺が投げ捨てた煙草とマッチが暗闇の中に落ちていく……。 「……………………」  ……………………。  ……そうだな……、それが一番楽かもしれない…………。  俺はずっと、そんなことするヤツはバカだと思ってた。心の弱い軟弱者だと決めつけてた。  けど、それは本当のドン底を知らなかっただけ……。  幸い、うちのビルの屋上のフェンスは低い。  10階建てのビルの高さがあれば、途中で意識を手放せるかもしれない。  ……フェンスに手をかけたとき、場違いなメールの着信音がした。
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