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聖夜のモントリオール。
僅かに吐き出す温かな息が次々と短く白い煙になって冷やされていく。
大きく息を吸うと肺が痛くなるので、ゆっくりと口で浅い呼吸を繰り返す。
見栄はって革靴にするんじゃなかった……
革靴を履いた足先は硬く凍り付き、冷たいという感覚さえなくなっていた。
クリスマスミサを終え、僕は家路を急いでいた。
別に誰かが待っているからとかではなく、ただ単に寒さから逃れたいだけだ。
教会で感じた熱気と喧噪はそこを離れるとともに遠く退いていき、今はただ革靴が雪に埋まりながらギュッギュッと出す足音だけが静寂の中に響いていた。
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