冷静と情熱と

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高雄は少し前のめりとなった。 店主の言葉に真剣に耳を傾けた証拠である。 「新しく取り入れるって言ったって、形があるものじゃないのに、どうしたらいいんだ?」 「情熱が、もし、形あるもので、貴方はそれを手に入れられるとしたら如何なさいますか?」 「手に入れる、どこにある?」 すると店主は行灯の火を細い蝋燭に移し、目の前の大きな瓶を照らした。 「うわっ」 ユラユラ揺れる蝋燭の炎に照らされて見えた物の不気味さに、高雄は声を上げて目を見開いた。 3つの瓶にはそれぞれ沢山の赤い虫と青い虫、十数匹の紫の虫が蠢いている。 どれも長さ2㎝位の芋虫の様な姿形をしていて、伸びては縮み伸びては縮みを繰り返しうねうね動いている。 「なんだ、この世の物とは思えない気味の悪い虫だな」 「おや、これは不思議な事を。世の中には種々様々な虫がおりますので、この様な姿の虫も探せばどこかしこにいるのです。ですがそれは姿が似ているだけのこと。ここにいる虫は特別な虫達でございます」 「特別な虫?」 「はい。情熱の赤い虫、冷静の青い虫、そして完璧の紫の虫でございます。」
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