11人が本棚に入れています
本棚に追加
高雄は少し前のめりとなった。
店主の言葉に真剣に耳を傾けた証拠である。
「新しく取り入れるって言ったって、形があるものじゃないのに、どうしたらいいんだ?」
「情熱が、もし、形あるもので、貴方はそれを手に入れられるとしたら如何なさいますか?」
「手に入れる、どこにある?」
すると店主は行灯の火を細い蝋燭に移し、目の前の大きな瓶を照らした。
「うわっ」
ユラユラ揺れる蝋燭の炎に照らされて見えた物の不気味さに、高雄は声を上げて目を見開いた。
3つの瓶にはそれぞれ沢山の赤い虫と青い虫、十数匹の紫の虫が蠢いている。
どれも長さ2㎝位の芋虫の様な姿形をしていて、伸びては縮み伸びては縮みを繰り返しうねうね動いている。
「なんだ、この世の物とは思えない気味の悪い虫だな」
「おや、これは不思議な事を。世の中には種々様々な虫がおりますので、この様な姿の虫も探せばどこかしこにいるのです。ですがそれは姿が似ているだけのこと。ここにいる虫は特別な虫達でございます」
「特別な虫?」
「はい。情熱の赤い虫、冷静の青い虫、そして完璧の紫の虫でございます。」
最初のコメントを投稿しよう!