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2人が住んでいたのは将来を見据えての広いアパートであったために美恵子は自分では住みきれないと出て行く事を真っ先に決め、高雄が住み続けるかどうかの判断も高雄に任せ、さっさと自分の荷物をまとめ、出て行った。
それを見送る高雄に追う情熱はなく、只、最後に残した美恵子の一言が訳も分からず疑問に思っただけだった。
『貴方が変わってしまったのは私のせいね。だけどあの時はこうなるなんて思いもしなかったのよ』
疑問には思ったが、それを追求する気持が高雄には生まれない。
聞いたところで答えてはくれないだろうと冷静に判断するだけだった。
格段に給与が下がったとは言え、このご時世で自分の年齢を踏まえて1から新たな職場でやり直す情熱も高雄にはない。
扶養家族である美恵子が居なくなった今、税金は多く収めなければならなくなったが日常的にかかる出費も減ったので、生活する上での収入に問題はない。
高雄は毎日何が楽しいのか分からないまま、同じような一日を過ごしていた。
そんなある日の事。
同僚の1人の変化に高雄は気が付いた。
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