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◇
待てど暮らせど、状況に変化は見受けられなかった。
システムは完璧な筈だった。あの時に受信したメールの日付と、システム完成の日が一致していたことから考えても、メールが過去へ送られていないということはあり得なかった。
では、あの条件だけではサチが死亡する未来は変わらなかったのだ。カズトはそう結論付けた。
ならばメールのアプローチを変えてみればどうかと、カズトはあらゆる可能性を考慮しながら苦心の上で再度メールを完成させ、送信した。
新たにメールに付け加えた条件は、外出許可をもらい明日一日、どこかへ出かけろというものだった。
メールは送信された。カズトは期待に胸を膨らませてサチの復活を待ったが、彼女が姿を現すことはなかった。
カズトはあきらめなかった。
あの手術のあった一日の過ごし方を多岐に渡る形で検証し、その都度、文言を付け加え過去の自分へと送り続けた。だが、現実は寸分も違わずカズトの眼前に存在し続けるばかりであった。
どうしてだとカズトは考えた。まさか。彼の明晰な頭脳は、そしてある結論に到達した。
そもそもどうしてあの日、サチは姿を見せなかったのか。しとやかなサチが液体洗剤と漂白剤を誤って混ぜるような早とちりをするであろうか。カズトにはそんなサチの姿が想像できなかった。
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