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まさか、まさか、まさか。
ある残酷な仮説が、彼の脳内で構成されていた。
サチは自殺したのではないか。
臓器提供者は、つまりカズトの胸で拍動しているこの臓器はサチのものではないのか。
そうすると、いつまでたっても現在の時間軸で過去改変が為されないことに対して見事に辻褄が合ってしまうのだ。
いくら過去のカズトがあの日一日サチを監視下においたところで、サチの死が回避されることはない。
仮にあの日、サチの自殺が回避されたとしても、そうなると臓器提供者が見つからないということになる。過去のカズトはあのメールがタチの悪いイタズラだったのだと思うことだろう。現に、今のカズト自身、あのメールを未来からのものだと信じたのは翌日の医者の「臓器提供者が見つかった」という言葉を聞いてからだった。
カズトはサチの言葉を思い出していた。
『手術を受けてください。あなたが病魔に打ち勝つことが今の私の唯一の望みです。カズトさんが助かる。こんな幸せなことはないわ。あなたなら大丈夫よ』
サチは初めからそのつもりだったのだ。
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