7人が本棚に入れています
本棚に追加
カズトは絶望した。カズトが助かるにはサチの自殺が必要であり、サチが助かるにはカズトが余命までの命を全うする必要がある。いずれにせよ、現在のカズトがサチと会うことは二度とないのである。彼は泣いた。嗚咽を漏らし泣き続けた。
そうして、カズトはある決心をして最後のメールを作成した。
From タカベカズト
いきなりのメール失礼する。
俺は未来のお前だ。
お前は今、病床に伏して苦しんでいることだろう。
だが、安心しろ、お前は生き延びる。
手術は受けるな。必ず失敗する。
医者のいうことは信じるな。
現に俺は手術を受けず、既に十年以上も生きてきたのだ。
サチにもすぐに、その旨を伝えろ。
なに、怪しむな。
あといくらかしないうちにサチが姿を見せるだろう。
彼女はイチョウを見て「綺麗ね」と言う。
話の流れで移植手術の話題が上るからその時にお前の決意を伝えるんだ。
大丈夫、彼女は幸運の女神さ。
最初のコメントを投稿しよう!