幸ある未来の入手法

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 二人はいつものように取り留めもない会話を楽しんだ。いつも通りに過ごすことが最も幸福を味わう方法であることを彼らは心得ていた。 「なあ、サチ」  皺の増えた眉間に更に皺を寄せて、カズトは切り出した。それは当人にも何故だか分からなかったのだが、自然と零れ落ちたものだった。「もし、臓器提供者が見つかったらどうする」  何もあのメールに感化されたわけではない。遅かれ早かれ、この質問への答えを二人の共通認識の中で決めておく必要があったのだ。そうしておけば、いついかなる場合においても迷いが生じることはない。  サチはいつも通り控えめに微笑した。 「手術を受けてください。あなたが病魔に打ち勝つことが今の私の唯一の望みです。カズトさんが助かる。こんな幸せなことはないわ。あなたなら大丈夫よ」  彼女の小さく透き通るような白い掌がカズトの胸の辺りに触れた。「大丈夫だから」  彼女は、カズトが再び眠りに落ちるまでそう繰り返していた。
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