幸ある未来の入手法

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◇ 「タカベさん。臓器提供者が見つかりました」  翌日の正午過ぎ、カズトは唐突に担当医にそう告げられた。 「今なんと」  信じがたい現実に直面すると人は状況を反復したがるものであることをカズトは思い出した。医者はまた同じ台詞を繰り返した。  頬をつねる。痛みがあった。おまけに胸部の鈍痛も消えていない。どうやら夢ではないらしい。 「やります」  瞬間、カズトは即応した。「手術を受けます」  担当医は神妙な面持ちでコクリと頷いた。  手術はすぐさま敢行された。国内では余り例のない術例となり、それは困難を極めた。十数時間にも及んだ手術は終了した。奇跡的に手術は成功したのだ。  カズトが覚醒したのは、術後、更に十日が経過してからであった。それだけ身体に負担のかかる手術だったのだ。朝の日の光がかなり高い位置にあった。カズトの中にふつふつと生きている感覚が沸き起こって来た。胸を襲っていた鈍痛は綺麗さっぱり消え去っていた。  生き延びた。カズトは生き延びたのである。  執刀医が目の覚めたカズトの病室を訪れた。カズトは思い付く限りの方法で彼に謝意を伝え、涙を流した。が、何故か医者の顔は冴えなかった。  医者は細い声で呟くように口を開いた。 「残念ながら……」  大きく間をとる。 「タカベサチさんが亡くなりました」
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