0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
外では、未だ降りしきる雪が世界を覆ってゆき、白銀の世界を創り出す。
それとは対照的に、今俺がいる場所は暖かな、安らぎの世界だ。
暦は冬の候を迎え、年の終盤も近い。
だが、俺の仕事は一向に減らずに、休みの日は今こうして十時に起床する有様だ。
昨日はかなり疲れて帰宅したのだろう。この季節の中ソファーで寝てしまうほど、疲れる職種なのだ。
無論、毛布一枚は着て寝たが、起きるともう一枚追加されていた。
それに、起きると部屋全体が暖かく、目の前のテーブルには質素だが朝ご飯が用意されている。
お礼を言おうかと、辺りを見回したが、あいにく誰もいなかった。
全体が木で構成された、俺たちの巣であるこの家。
二人暮らしのため、そこまで大きくはないが、それでも立派なログハウスだと自負している。
だが、それもあと数ヶ月で終わる。
今、妻のお腹には第一子となる命が宿っているのだ。
仕事こそ忙しいものの、日に日に大きくなる我が子を見ると、辛くても耐えれる。
それが、今の俺の幸せだった。
まだほのかに暖かい飯を、唸る胃に突っ込む。
やはり、妻の飯はいくら質素でも美味しい。疲れの残滓を吹き飛ばしてくれたような気がした。
元気をもらった俺はおもむろに立ち上がり、結露のできた窓へ向かう。
そして、子供よろしくその窓に文字を書く。
“雪乃 Happy birthday”と。
最初のコメントを投稿しよう!