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―――――――――――――ガチャン
一枚扉を隔てた玄関から、鍵の開く音がして私は目を覚ました。
暗かった部屋に明かりが灯り、
「……寝ていたのか?」
一呼吸置いてから聞こえる、優しい声色。
ホッと安心するような、耳心地が良い……とでもいうのだろうか。
「うん、ごめん……ご飯作ってなかった。直ぐにっ……!」
「いや、いいよ。腹は空いていないから」
ソファから体を起こし、急いでキッチンの方へ移動した私を彼の声がひき止める。
「えっ……でも……」
「大丈夫。それより、仕事疲れたろう?」
キッチンのカウンター越し、カウチソファにドっと座り、ネクタイを緩めながらフワリと細い目を私に向けたのは矢野 宗次郎(やの そうじろう)。
彼との関係は信頼こそあれど、恋人でも友人でも無い
いわばグレーゾーン。
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