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―――――――プルルルル、プルルルル
「あーい。相野原建築設計事務所っすー」
「おい、宮我(みやが)!!あーいじゃない!っすーじゃない!!」
「シッ!!所長!電話中ですよっ……!?」
いつものやり取りに苦笑いが浮かぶ。
注意し返された所長がシュンっと肩をすぼめる姿すら愛おしいとさえ思う。
きっと街で会ったら、少しダンディなちょびひげのじいさんとしてインプットされるだけなのに。
……俺は愛に飢えているのだろうか。
「一ノ瀬(いちのせ)さん。お帰りなさい。確かコーヒー……で、いいんですよね?」
「ああ……、自分でやるからいい」
「そうですか……。あ、なにかあったら言って下さいね?今日は来客予定がなくて暇なんで」
受付兼事務の管原(すがわら)は、この事務所唯一の女性。ブルーのタイトスカートを翻し去る背中には、社会人一年目という若々しいやる気が感じられる。
そんな彼女に軽い会釈をしてデスクに座った。
現場に行く前は無かったファイルの山々
ヨシッ……
心の中で小さな歓喜が湧いた。
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