2236人が本棚に入れています
本棚に追加
矢野くんの顎先を伝い、怒りを押さえ込み震える手の甲の上、ポタリと雫が落ちた。
彼も私の方を見ようとはしない
私も……彼の顔を見上げる事が出来ずにいた。
「どうして……わからない?何故、何かを変えようと生き急ぐんだ……。俺は……那緒がそのままでも構わない。こうして……、側にいられるだけで十分だ……」
「だって……、私は矢野くんに触れたい。皆と同じように、手を繋いで、キスをして……そんな風にっ……」
「……そうしなければ……、俺といる意味はないと……?最低な連中共の真似事を俺にさせてまで、そうでもしなければやっていられないほど辛かったか?」
「違うっ……!!!そんなんじゃ……」
彼の肩に伸ばしかけた手が空中で止まる。
私を見て、こっちを向いて……
お願いだから……
最初のコメントを投稿しよう!