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放課後、俺は空き教室の前に立っていた。
ここは温泉部が部室として使ってる部屋だ。
ドアに下がってるネームプレートには、おそらく温泉部と書いてあるんだろう。
タオルがかけてあるから正式な部活名は不明だ。
俺は緊張していた。
あの衝撃の正体を確かめたい。
だから、俺は、ここに、いる。
ドアノブに手をかけた時、
「あー!」
大声に驚き振り返る。
駆け寄ってきたのは、今朝のゲリラの1人だ。
フワフワしたクルクルのショートヘア。
チビだ。
目がクリクリのところはまるで小動物だ。
これでも、一応、先輩なのか。
「入部希望! やったじゃん!」
小動物は俺の腕を掴むと、ドアを勢いよく開けた。
「部チョー! 部員が増えたー!」
教室の戸を開けたら、そこには温泉がーー
ない。
あるわけないか。
代わりにあったのは、町のジオラマだ。
無数の印は、温泉だ。間違いない。
「すごい……!」
感動した。
「この町にこんなにたくさん温泉があるなんて知らなかった……」
「このジオラマは書記の沖守くんが作ったんだよ」
部長らしき男は優しい笑顔を浮かべていた。
ゴールデンレトリバーだ。癒し系のレトリバー。
部長が残りのゲリラか。
「新入生だね。温泉」
「部チョー部チョー!」
「ーー部へようこそ」
「新歓やろう!」
「そうだね」
「温泉部の新歓っていったらあれじゃん!」
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