2人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな日々の中で、僕はあんな風に自由に体を動かせる人を、羨ましく思った。
尊敬した。
僕はきっと、一生あんな風に体を動かすことは、ないのだろうから。
でも、僕の背中にも羽が生えた。
今僕は、自由に体を動かすことが出来る。
前にも後ろにも、右にも左にも、下にも、上にさえ、車椅子無しで移動できる。
それはなんて自由。
なんて快感。
これを僕は求めていたんだから。
眼下には僕の両親の姿が見える。
病室の窓際のベッドの脇で、担当医と話をしているお父さんとお母さん。
そして、ベッドの上の布団のふくらみの上に乗っている、僕の友達。
……寂しいけれど、僕は行かなくちゃ。
僕の背中の羽がいうんだ。
次の世界が、待っているって。
さよなら、
僕は一言だけその病室に別れを告げて、旅立った。
友達が一瞬だけ、こちらを見た気がした。
最初のコメントを投稿しよう!