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茉莉花が? 彼女が? 何故?
木幡はさらっと言う。
「お引き受けしましょう」
「やってくれるか!」
「はい。お代は結構です」
「ただ働きさせるわけには」
「宜しいのです。ただし条件があります」
「条件?」
木幡は慎の真ん前に人差し指を据えて言う。
「お受けするのは今回だけです。そして、今後、自分を見かけても絶対に声をかけてはいけません。お約束できるのでしたら」
「わかった」慎は大きく頷く。
茉莉花と一度繋がれた手は、今、遠く及ばない。
このままにはさせない。
後悔したのは自宅に帰ってから後悔した。
相容れない世界の人間に声をかけ、茉莉花の話をした。ばかなことをした。
しかし、道は敷かれた。自ら望んだことだ。
果たして木幡の仕事は早かった。彼と別れて数日もたたないうちに連絡が来た。待ち合わせの日時と再会した海岸へ来いとだけ一方的に指示された。
約束の日は土曜日だった。その日は朝から落ち着かなかった。終業を伝える鐘の音と同時に学校から飛び出した。
待ち人はさほど時を置かず現れた。
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