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「探し人は何者ですか」咳払いをして木幡は繰り返す。
「大切な人だ」
「女がですか」
「そうだ」
「妻子がいても?」
「……そうだ」
「ご依頼には応えられませんでしたが、あなたにお伝えできることはある。お待ちなさい」
「待つ?」
「自分があなたに言えるのはここまでです」
では、と軽く帽子をあげて、木幡は今度こそ去って行った。
待てば彼女の消息に繋がるのか。それはいつまで続くのか。
木幡を追いかけ、首根っこをつかまえて問いただしたい衝動に駆られる。
が、彼は慎に待てと言った。いくら問い詰めても彼は望む答えは口にすまい。
そして、今度のことが終わったらお互いに干渉しない約束だった。
先が見えない。
遠くだった波音が、今は大きくうねって響く。
潮が満ちる。
茉莉花と最後に別れてから、季節は3つを数えていた。
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