0人が本棚に入れています
本棚に追加
ブー。ブー。
遠くで携帯電話のバイブが響く。
絶望のどん底にいる俺に、同情と哀れみの手を差し伸べてくれた人達からの連絡が途絶え、ただ充電器に刺さったままだった鉄の塊が唸る。
今更、知り合いから連絡が来るはずもない。
どうせ体良く溢れかえっているダイレクトメールだろう。
いつもなら一瞬意識がそちらに向くだけで終わるのだが、なぜか携帯電話を手にしていた。
あれから何日ぶりに触るだろうその物質は、いつにもまして冷たい感触だった。
『新規メール受信』
ああ、やはりダイレクトメールだな。
そう思い、削除しようとスライドした指が止まる。
『差出人:未来の自分。』
しばらく動いていなかった脳が、久しぶりに思考を巡らせる。
渇いた唇から声が漏れた。
「俺に……未来があるわけないだろう……」
かろうじて聞き取れるかどうかの小さな音がこぼれた。
最初のコメントを投稿しよう!