第1章

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ブー。ブー。 遠くで携帯電話のバイブが響く。 絶望のどん底にいる俺に、同情と哀れみの手を差し伸べてくれた人達からの連絡が途絶え、ただ充電器に刺さったままだった鉄の塊が唸る。 今更、知り合いから連絡が来るはずもない。 どうせ体良く溢れかえっているダイレクトメールだろう。 いつもなら一瞬意識がそちらに向くだけで終わるのだが、なぜか携帯電話を手にしていた。 あれから何日ぶりに触るだろうその物質は、いつにもまして冷たい感触だった。 『新規メール受信』 ああ、やはりダイレクトメールだな。 そう思い、削除しようとスライドした指が止まる。 『差出人:未来の自分。』 しばらく動いていなかった脳が、久しぶりに思考を巡らせる。 渇いた唇から声が漏れた。 「俺に……未来があるわけないだろう……」 かろうじて聞き取れるかどうかの小さな音がこぼれた。
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