第1章

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「マジか?」 それは突然にやって来た。 丸く見開いた目で宝クジのナンバーと新聞紙の一角を何度も行き来した。 「ヤベェ、マジで一等が当たってる。これでオレは…、億万長者になったんだ!」 この想いを今すぐにも大声で誰かに伝えたい。普段、滅多に開けることのない部屋の窓を開け放った。 「だよな…」 思わず苦笑いをし、隣りのビル壁が目の前に迫っている事を思い出した。 アホで評判な馬鹿高をどうにか留年もせずに卒業し、就職先には大手の孫請けをしている地元密着型の金型工場が拾ってくれた。 初めからフリーターにならなかっただけでもありがたいと思いなさい。 親はそう言うが、正直言って仕事は厳しいし怒られてばかりだった。 「あの会社、もう辞めちゃうか?」 ニヤニヤしてしまうオレは、億万長者になり気が大きくなった。 「車も選び放題だな。外車、行っちゃうか?」 考えただけでも笑いが込み上げてくる。
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