1「チーム・パイオニア」

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1「チーム・パイオニア」

「アルファ、聞こえるか。こちらデルタ、応答せよ」  その声を頼りに、アルファと呼ばれた男は、その頭を覆うマスクの中で瞳を開けた。しかし、意識は未だに混濁として虚ろなままだった。辛うじて呻き声を上げると、デルタと名乗った男の声は、マスクの耳元に備え付けられたスピーカーの向こうで、安堵のため息を漏らした。  デルタはそれから、アルファの意識が回復するまで励ましの言葉を投げかけ続けた。アルファは度々失神したが、その度にデルタの声で目を覚ました。やがて、アルファの意識ははっきりとし始める。  あまり体を動かさない方がいいと注意されていたアルファだったが、独断で起き上がると、近くの岩に凭れかかった。パワードスーツがぶつかって音を立てる。  崖の底のようだった。自分は河に流されてきたようだな、とアルファは速い水の流れと、そこから伸びる濡れた地面を見て推論した。  偶然だ。奇跡的と言っても良かった。崖底の洞窟に、運良く打ち上げられたのだ。  対岸は絶壁だった。上の方は霞がかっていて確認できない。そして、此岸も同じような絶壁なのだろうと、アルファは自分の幸運に感謝した。 「デルタ……一体俺に何があった。状況は分かるか」  アルファは、震える声でそう問いかけた。無線の向こうの男は緊張しているような声色で言う。 「その前に、君はどこまで覚えている? アルバの神殿に到着したのは覚えているか?」 「アルバ……」  それから、アルファは黙考した。自分がここに来るまでの事を。
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