1「チーム・パイオニア」

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「まあまあ、落ち着いて。ユアン・オズボーン博士」  イギリス訛りの英語を操るのは、Ε(イプシロン)のスーツだった。スーツの意匠も、他の五人とは違ってどこかくびれている。プロポーションに調整しているらしい。本名で呼びかけられたデルタは、冷静さを取り戻して一歩下がった。 「地球にいる間くらいは許してあげましょう」イプシロンが、ゼータの方をしり目にそう続けた。 「まあ、今に始まったことではないしな……」と話を聞いていたΒ(ベータ)が遠くから同意する。 「とりあえず、二人とも落ち着け。ゼータ、クリスマスモードを止めろ。今何月だと思ってる」  アルファが慌ててそう言うと、デルタは押し黙った。それを見て、ゼータのパワードスーツが平常に戻る。 「がはははは、だせえ。手前が怒られてやんの」 「ゼータ!」アルファが怒鳴った。「仲間同士で不和を招くような行動は慎め。お前のその突飛な行動を赦すのは、大変な苦労なんだぞ」  アルファがそう窘めると、何が琴線に触れたのかゼータは軽く舌打ちをして、ふて腐れてソファーにどかりと座り込んだ。イプシロンが「ホントの作戦行動中はちゃんとしなさいよ」と言うと、「分かってるよ」と鬱陶しそうに返した。 「しかし……」アルファが話を逸らすために時計を見る。「ゲートはいつ開くんだ? もう一時間は経つぞ」  β(ベータ)が誰にも気づかれないほど小さく頷いた。 「さっき、担当者に通信をしてみた。そろそろだそうだ」  そう言った瞬間、待合室の自動ドアが開き、恰幅の良い白衣の男が現れる。  そのはち切れそうな革のベルトや、短く刈りあげた金髪、奇妙なほどに澄んだ青い瞳は、典型的なアメリカ人を想起させた。  ゼータは大きく舌打ちをした。彼はその昔旅行先のラスベガスでスリに遭ってからというもの、理不尽な事にアメリカの事すべてを酷く嫌っているのだ。その事は繰り返し何度も彼は言っていたから、場の全員が舌打ちの意味を理解していた。
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