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「あっ、いらない……」
よね。って言おうとした瞬間に、影虎くんがフォークでカリカリをすくうと、ぱくっと食べた。
スローモーションで吸い込まれていくそれを眺めて、ぐうっと盛り上がる涙をまばたきで断ち切った。
「あう」
囁いたオレの目の前で、ごくんと音がして、影虎くんの喉が動いた。
ああ、さようなら、オレのビーフ汁(ほんもののおにくあじ)つきチキン味穀物たっぷりダイエット用カリカリ。おいしいよね、それ、おいしかったよね。
すうっと影虎くんの切れ長の目がますます細くなって、口元が歪んだ。頭ががくんと落ちる。手ででその額を押さえて机にひじをついた。
なんか背中が微かに震えている。
あ、感動してる?やっぱ本物のビーフの味のついてるカリカリおいしいよね。それ、オレのだからね。オレのご飯なんだからね。
影虎くんの手が動いて、ぷるぷると震えながらオレのカリカリの皿を指差した。
え?って思った瞬間にオレの目の前から皿が消えた。
オレの隣に立った金髪不良っぽい中虎くんが、何故かオレのカリカリの皿を持ってる。ものっそい怖い顔の中虎くんに、びびんって背中が硬直する。
「え?」
どうするんですか、それ。
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