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視界の隅に茶色いものが映る。ああっ、カリカリ!カリカリは赤虎くんの前に転がっている。赤虎くんが、ひょいとカリカリを取り上げて、無表情のまま口の中に放りこむ。
「えっ」
「まずっ」
入れた瞬間に赤虎くんがぼそっと言った。
えっ!
「マジでくそまずい」
中虎くんがよろよろと立ち上がりながら言った。
「えっ!」
「こんなもの食って、お前はマゾか」
中虎くんが殺気のこもった目でオレを見る。
「えっ!えっ!だって、カリカリは元気で楽しいわんこの生活を支えるおいしいバランス栄養食だよ!正義なんだよ!」
「おいしくないというか……とてもまずい」
ふむと顎に手を当てた赤虎くんが、冷静に二度カリカリを罵倒した。
「えっ、でも、オレ毎日食べてるよ」
「「毎日!」?」
二人がびっくりした顔でオレの顔を見る。いや、おいしいよ。ごはんだもん。ごはんはおいしいよ。お腹いっぱいになったら幸せでしょ。
ああ、そうだ、今日のごはんはもうないんだ。ぐうぐうとお腹が鳴る。Aランチ牛肉100%ハンバーグの匂いがすきっ腹を刺激して、なんだか泣きそう。
いや、泣いている場合じゃないよね。
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