2人が本棚に入れています
本棚に追加
『新鮮、店内で捌いています』
風にはためくのぼりを一瞥し、綺麗に盛り付けられた桶のポスターを睨む。
鯛にマグロ、イカ。
今日こそは、今日こそは、一人で入るの。
鼻からゆっくり息を吸い込み、口から細く吐き切る。
空手の型の如く、脇の左右でぐっと拳を握る。
うんっ、落ち着いた。
一人で好きな物を好きなだけ注文して食べてやるんだ。
何時もは友達と来るんだけど、それだと気取っちゃってあんまり好きな物を頼めないのよね。いっぱい食べるのも気が引けちゃうし。
笑われるかも知れないけど、これは勇気が要るわ。
女子一人で入るお店じゃないと思うし。
「お一人様ですか?」
店員さんの問い掛けに無言で頷く。
可愛くないと言われそうだけど、緊張して声が裏返りそうなのよ。
許してっ。
カウンターに通された私は早速、タッチパネルで注文する。
マヨコーンにサーモンマヨ、明太マヨにエビマヨ……。
最初のコメントを投稿しよう!