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(それでも、私の武器はこのスマホだけだから)
そう思い心を奮い立たせて、私は未来で死んだ自分からのメールを開いた。
『23』
メールの文面には最初に、無機質な数字が並んでいた。
(23回死んだという意味かな?)
私はそう思い、それを24に打ち直した。
24回目で迷宮に挑むという意味であり、そこで死んだ後の私に宛てたメルクマール(目印、指標)だ。
私はリターナ── 死還者である。
事故や災害で突然死に見舞われると、その死から1時間前の時点に戻るのだ。
死から還ったときに、死までの1時間の記憶は無い。その1時間前に立ち還って、死の罠から逃れたという感覚があるだけだ。
それは神を欺いた奇跡であり、悪魔と取り引きした能力かも知れない。でも私は、その悪魔を出し抜いてきた。細心の注意を払って、用心深く逃れてきたのだ。
絶対の死から逃れる術はあった。
要は1時間を超す乗り物に乗らなければ、突然の事故を未然に防げるのだ。もし出遭ったとしても、リターナした時点でそれを変更すれば良い。
そしてもう一つ── 死に遭っても手に持った物だけが、リターナした時点に戻るのだ。
そして今、私の手にはスマホだけがある。これが迷宮監獄を脱出する武器であり、死んだ私からのメルクマールなのだ。
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