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迷宮監獄のメルクマール 「承の章」
(何かの実験だろうか?)
また、同じような疑問が頭をよぎった。誰かが私のリターナに気づいて、それを利用しようとしているのか?
そう考えたときに、映像で観た迷路を進むモルモットを思い浮かべた。
(私はこの迷宮を永遠に彷徨うモルモットだ)
そんな黒い絶望が心を浸食する。
それは生きた葉を炎で炙ったときに出来る、黒い死環である。漆黒の円環が、じりじりと心を灼いて焦がす。
『右に13、左に17、右に19──』
心が挫けないように、メルクマールに従って黙々と進む。
1時間を過ぎずに訪れる死から逃れるように、淡々と私のメルクマールに従うのだ。
(スマホに写真機能とか、録音アプリがあれば良かったのに)
そう思っても後の祭りである。ましてや、電波の届かないスマホは何の役にも立たない。
唯一の救いはメール機能だけだ。送信が出来なくても、メモ帳代わりになるからだ。
(これを打っていた私は、一体どんな気分だったのだろうか?)
おそらく、今の私と同じだ。
この迷宮から抜け出すことを、神を欺き悪魔を出し抜くことを、自分が生き残ることだけを考えていたはずだ。
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