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仕方がない、こうなりゃ取材攻勢でいくか。
「あ、すみません、○×事務所ですか?
わたくしよたろーTV 編集局長 介殻 廉次 と申します。
俳優の岡山さんに取材をさせていただきたいのですが。
はい、今度わたくしの番組で女優広崎の特別番組を制作予定で
はい、はい、広崎さんと舞台で共演されましたよね?
はい、では二日後によろしくお願い致します。
ぴっ
あ、お忙しいところすみません、わたくし・・・」
廉次は次々と俳優に取材のアポを取り付けていた。
廉次は目立つ黄色のネクタイをしめて、岡山とTV局の並びのカフェで待ち合わせをしていた。
俳優岡山 仁(おかやま じん)はもう87歳で、引退したのは足を痛めた為だった。
今は杖をついていたが、カフェに入ってくる様子は、未だ現役時代のオーラを纏っているように見えた。
「お忙しいところ、ありがとうございます。
本日取材させていただくよたろーTVの介殻廉次と申します。
お飲み物をご注文いたしますが、何がよろしいですか?」
「・・・私はブラジルで。
それにしても、何故今頃女優広崎とのことを聞いてきたんだね?
私は話すことなど何もないよ?」
岡山はゆったりと広めの椅子に腰掛けて、言葉程は嫌ではない雰囲気
だった。
「1年前、広崎さんがご病気でお亡くなりになった後、過去の恋愛が一時期取り沙汰されたのを覚えていらっしゃいますか?」
「ええ、覚えております。」
「その理由というのが、遺産問題でして。」
「彼女の遺産?
そうでしたか、それは・・・」
その表情は、変わらない。
「ご存知でしたよね?
鳥が遺産を引き継ぐってことですが。」
じっと廉次を見つめた岡山は、興味無さそうに言った。
「鳥、が好きでしたね、彼女は。
私と舞台を共演した当時は、まだ20代でしたが、彼女はその頃はジュウシマツを沢山飼っていました。」
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