第二章 「 女優の過去 」

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「そんな大昔の話、何故調べているんですか?」 「あの、一応TV局の者で。」 名刺を渡すと、少し表情が和んだ。 「なんだ、よたろーTVさんでしたか。 私、そちらの夜の旅番組のナレーションさせていただいてますから。 ・・・でも、広崎さんはお亡くなりになったんですよね。」 とっつきが悪いと緊張していたが、廉次はやっと説明できると思った。 「それがですね、謎の遺産問題がありまして。」 「遺産?彼女に遺産・・・ああ、そういえば、全財産を・・・」 若野宮は言いかけて、そこで止めた。 「そうなんですよ、それで」 突然、喫茶店の中が騒がしくなった。 女性達が若野宮に気がついたのだ。 「若野宮さんですよね?私、昔からファンなんです! 握手してください~~!」 いきなりスマホで撮影しそうになったので、若野宮は仕事なんでと 言って、皆を押しとどめた。 「すみませんが、今取材中なんです。」 廉次が女性達を柔らかい手つきで、ドアの方へと流すような仕草をした。 「ここから入らないでいただけますか?」 女性達はすみませんと言って、しぶしぶその場から離れた。 「広崎さんとは20歳は違いましたよね?」 「ですから、関係はないんです。」 「でも、よく舞台では共演されていた。」 「大女優ですからね、あの方は。」 「その後のご活躍を、嫉妬されたりしました?」 「誰に?広崎さんに? いいえ、そんなことはないです。 今の私があるのも、広崎さんのおかげですから。」 「それじゃあ、家にもしょっちゅう呼ばれたでしょうね?」 「まあ・・・かなりお酒が強い方でしたから、お酒の相手ですよ。」 若野宮は帽子を被り直すと、飲み物を勧める廉次にかまわず、ドアを出て行った。
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