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マスターは車を走らせながら、俺に言った。
「お客様にまで、手伝ってもらって、なんというか・・・
本当に助かりました。
彩子も、心強かったろうと思います。」
俺はマスターにさりげなく聞いてみた。
「マスターは、彩子さんのこと、その・・・
どう思ってます?」
「そうですねえ・・・彼女はそういうタイプじゃないんですよ。」
「はは、わかります!鳥が恋人ですもんね!」
「ははは、そうなんですよ、皆さんよくわかっててね。」
「実は俺、彩子さんに癒されてます。」
「困りましたね、あの子にそれが通じるといいんですが。」
「いや、きっと、わからないと思います。」
まだ俺は興奮してるんだろうと思う。
冷静に考えて、俺は今日初めて行動したことで、いっぱいいっぱいだったんだから。
彼女が鳥に夢中になってることで、今更ショックとか言うのもおかしな話なんだが。
「マスターはいいですね、いつも彩子さんと一緒だから。」
なんだか俺はいじけてるのかな?
「そうですね、でも案外」
「あ、そこの角です、ありがとうございます!」
キキーーーーッ
「ありがとうございました、おやすみなさい。」
マスターはちょっと会釈をして、すぐに車を発進させた。
今日は興奮して眠れないかもしれないな、と思いながら、アパートのドアを開けた。
頭の中で、トリネコとコゼットが仲良く彩子を囲んでしゃべっている。
さいこ、ばーか、コゼットばーか、コゼットいいこいいいこ・・・
会話にならない会話が、俺の頭の中で響いていた。
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