第二章 「 女優の過去 」

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よたろーTVで廉次は今日会った有名俳優や社長の言葉をPCに残していた。 彼らはなかなか時間を合わせるのが大変で、番組の内容にからめて取材していると 言わなければ、会うことすら無理だったろう。 記事を書きながら、廉次は遺産について考えていた。 あの社長は宝石と聞いた時、驚いていた。 それからあの変な笑い方。 明らかに宝石ではないのだろう。 それから、コンゴウインコは、他の鳥をうっぱらって1羽で飼っていた、という事もわかった。 しかし廉次には、どの話もピンとこなかった。 それほど、女優の得た栄光と名誉は大きく、今日聞いたどの話にも共感できなかったのだ。 いくら鳥が好きだからと言って、全ての財産を鳥に預けるだろうか? そこまで馬鹿だとは思わなかった、という社長の気持ちは理解できた。 書きながら、廉次は番組にする時の構成を考えていた。 大女優の隠し財産、鳥が相続するも、未だその財産見つからず。 女優広崎を語る元恋人は、果たして現れるのだろうか。 過去の写真が切り取られて次々に画面に浮かんでは消え、俳優らが女優の面影を時代の 移り変わり浮き沈みの中、さながら街の雑踏と喧騒を駆け抜けながら話す。 言葉は途切れ、千々に乱れて飛んでいく。 「なんでドラマのオープニングみたいな出だしが浮かぶんだよ。 ・・・まったく俺も、昔の夢が忘れられないって、やつか。」 ぶつぶつと独り言を言いながら、廉次はタバコの火を点けた。 廉次はずっと映画を作りたかったのだ。 TV局に入社できた時は、夢に近づいたと思った。 だが廉次は途中で気がついたのだ。 何かが自分に足りない・・・ 今更だが、こんな女優のような人生を歩んでいれば、映画は ・・・いや、カメラは勝手に廻り始めるのだろう。 情熱が足りなかったのだ、と廉次はいつも思っていた。 その廉次が自分の興味と好奇心、そして若干のヒットの予感から女優が遺したものを必死に探し始めていた。 「感情移入ってのが、一番面倒だな、まったく。 あーーーー!ちきしょーーーーー!! お、メールか・・・ 何?!名前だって?? おいおいおいおいっ!! それを早く言ってよ~~~~~~!!」 猛烈な勢いで、廉次はコゼットを検索した。 その夜はPCを叩く音が止まる事は無かった。
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