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「ホントウの暗闇」を見たことがあるだろうか?
大学の帰り、ふと思い立った疑問を僕は考える。
思い返してみると、夜道を歩いていて暗いと思ったことはあっても、本当に真っ暗だったということはないように思う。
今こうして歩いている道も、街灯に照らされて明るい。
街の中はどこもかしこも光に溢れ、暗闇なんか見つかりそうもない。
昼間の明るさとは違うけど、ここは確かに明るい。
それなら、郊外はどうだろう?
少し遠回りになるけど、僕は街を離れて夜の田んぼ道を歩いてみる。
季節は冬。
冷たかった空気の温度が一段と下がったように感じる。
冷たい空気の塊の中を歩く。
道を照らすのはわずかな電灯だけ。
それでもまだ道は見える。
暗闇にはまだ遠い。
遠くに黒い針の山が見えた。
森だ。
行こうかどうか少し迷ったけど、僕は歩を進め、森の中へと入っていった。
足元でガサガサと乾ききった枯れ葉が音を立てる。
辺りは何も見えないほど暗い。
真っ暗。
けど、空を見上げてみる。
澄んだ夜空に月と星が見えた。
ここもまだ暗闇じゃない。
しばらく経つと、雲が月と星を隠した。
今度こそ、ホントウの暗闇だろうか?
ーーいや、雲がかかってるんだと分かるくらいには明るい。
不思議なことだけど、雲がかかっていない夜空の方が、その黒さは濃い。
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