電車のお話

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深夜。彼女を殺すために電車を待っていると、おかしなことに気が付いた。 ついに頭がいかれたのかと思った。けれど、ナイフで指を切ると痛かったので、案外ぼくは冷静だ。 そんなことより。 ぼくはまた駅のホームにぶら下がる電光掲示板を仰ぎ見た。 ――人を殺す明日 やっぱり行き先がおかしくって、目を擦った。けれども消えない。行き先の横で明滅を繰り返す電車のマークも消えない。 ぼくを囃すように、電光掲示板の表示が切り替わる。 いじめられた青春時代 ドキリとした。 それが引金となったみたいに次々流れゆく。 面接で罵られたあの日 リストラされたあの日 快感を知ったその日 離婚を求められた昨日   次に現れたものを見て――あ、これだ、と思った。 それから1分足らずでやって来た無人電車に乗り込む。 都合のいいこともあるもんだ。 死後の世界、だなんて。 楽しみで楽しみで、ぼくの心は童心のように浮かれた。
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