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薄暗い部屋の中で俺は目を覚ました。 まだ朝日の出ていない時間帯だったが、この時間になると目が勝手に醒めてしまう。 狭いワンルームには、ベッドと、畳まれた数枚の着替え、それから、緩く湾曲した刃を持つ“紅蓮清正”が、壁に掛かってぽつんと置いてあるだけだ。 小さく身震いすると、口の端から白い息が洩れた。今朝はかなり冷え込んでいる。 暖炉に火を入れてから、刀を掴んで部屋を出た。石畳を見ると、煉瓦の上に銀色の雪が積もっている。 更に雪が積もるようになれば、イストルランドの周りは高い雪で閉ざされ、外からの旅人はほとんどいなくなってしまう。 だが、活火山の上に出来たこの街自体に、雪が高く積もる事はない。まあ、それでも、例年膝丈位までは積もってしまうのだが。 日課の素振りを始めようと、刀を抜いた。 冷たい空気を目一杯腹に貯め、俺は刃を振りかぶる。 「ゲン!」 いざ刀を降り下ろそうとした、その時。城の方から、誰かが駆けてきた。雪を蹴散らし、荒く息を吐いて。 フードつきの厚手のガウンを着ているが、中はまだ寝巻き姿のままのエクートの姿だった。 よほど慌てて来たのか、その足元は裸足だ。
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