※ A ※

4/16
前へ
/271ページ
次へ
「なん……ふぇ……なんで……っうわあああああん!!」 「おっおい?!」 大変だ。 あのエクートが泣き出してしまった。 天変地異の前触れか、それとも虫歯でも痛むのか。どちらにしても俺のせいじゃないぞ。 「ゲン、ゲンの○&▽×※◎……!!」 なんだかよく分からないが、とにかくエクートは、中腰になった俺の肩や腹をめちゃくちゃ殴ってくる。 痛い。めっちゃ痛い。 こいつ、しばらく手合わせしていなかったが、やたら攻撃力が高くなってないか? 「なぁ、何がなんだか……俺にも分かるように説明してくれないか?」 「ひっく……だって……ゲン……」 ようやく泣き止みそうになったエクートは、俺の精一杯の笑顔を見て、再び顔をグシャグシャにした。 「ふええええええええん!!!」 …………ダメだ。 見ると、エクートの泣き声のせいで起き出してきた御近所さんが、カーテンの隙間から俺達の事を覗いている。 一歩間違えば、妙な噂を立てられかねない。何せ、エクートはまだ寝巻きのままだ。 この街で、エクートは“少年”だが、今はピンクのガウン、しかも頭にはフードを被っている。これじゃあ俺が、女の子と喧嘩しているようにしか見えない。 見ようによっては……犯罪だ。 「とにかく中に入ってくれ!」 俺は泣きじゃくるエクートの肩を抱くと、部屋の中へと促した。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加