5人が本棚に入れています
本棚に追加
「なん……ふぇ……なんで……っうわあああああん!!」
「おっおい?!」
大変だ。
あのエクートが泣き出してしまった。
天変地異の前触れか、それとも虫歯でも痛むのか。どちらにしても俺のせいじゃないぞ。
「ゲン、ゲンの○&▽×※◎……!!」
なんだかよく分からないが、とにかくエクートは、中腰になった俺の肩や腹をめちゃくちゃ殴ってくる。
痛い。めっちゃ痛い。
こいつ、しばらく手合わせしていなかったが、やたら攻撃力が高くなってないか?
「なぁ、何がなんだか……俺にも分かるように説明してくれないか?」
「ひっく……だって……ゲン……」
ようやく泣き止みそうになったエクートは、俺の精一杯の笑顔を見て、再び顔をグシャグシャにした。
「ふええええええええん!!!」
…………ダメだ。
見ると、エクートの泣き声のせいで起き出してきた御近所さんが、カーテンの隙間から俺達の事を覗いている。
一歩間違えば、妙な噂を立てられかねない。何せ、エクートはまだ寝巻きのままだ。
この街で、エクートは“少年”だが、今はピンクのガウン、しかも頭にはフードを被っている。これじゃあ俺が、女の子と喧嘩しているようにしか見えない。
見ようによっては……犯罪だ。
「とにかく中に入ってくれ!」
俺は泣きじゃくるエクートの肩を抱くと、部屋の中へと促した。
最初のコメントを投稿しよう!