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その後も、通りすがりの奴らに挨拶を交わすと、誰もが俺の事を不思議そうに見つめていた。そのたびに、エクートは溜め息をついたり、困ったような顔をして俺を見上げる。 ようやくエクートの寝室までたどり着くと、エクートは、何回か深呼吸した後で、おもむろに扉を開けた。 部屋の真ん中にあるベッドには、突っ伏すようにして跪くクーゲルの姿があった。 急いでベッドまで近寄ると、クーゲルの顔を覗き込む。 顔色は悪いが、死人の顔じゃない。 手を取って脈を計ると、規則正しい鼓動が鳴っていた。息もちゃんとしている……間違いない、眠っている。 眠っているだけ、だ。 「どうしてこんな所に?」 「うん……ボクが起きたら、そこに寝てたんだ」 険しい顔つきのまま、エクートが言った。 別におかしな事じゃない。少なくとも、早朝から御近所さんに誤解される程、あわてふためくような事態じゃない。 魔王とはいえ、人間と同じようなものなんだから、疲れれば寝るだろう。たまたまベッドに入り損ねて、床で寝ているだけの事だ。クーゲルはどうか分からないが、俺はよくやる。 「起こそうと思うんだけど……大丈夫かな?」 寝間着姿のまま、エクートは手に何かを装着した。ナイフのようなトゲトゲの付いた武器だ。ナックルという物だろう。 それで攻撃をして大丈夫かどうかと訊かれれば、まず大丈夫じゃあない。ましてやクーゲルはひ弱な男だ。エクートの一撃を受ければ、最悪、死ぬ。 それはそれで見てみたい気もするが、ここは良心に従うべきだろう。 「とりあえず武器はしまえ」 エクートの前に立つと、クーゲルの肩を揺すった。
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