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「……ゲン、ひとつ伺ってもよろしいでしょうか」 と、ようやくクーゲルは俺に問いかけた。 「なんだ?」 「チェルシーの事を覚えていますか?」 相変わらず、クーゲルの言う事は全然理解できなかった。俺は首を傾げた。 「なんだそれ。人か?」 「えっ!?どうして……ゲンが知らないの……?」 エクートが驚いたように声をあげた。まるで俺がそれに詳しいような口振りだ。人の名前か、物、あるいは土地の名前なんだろうが、頑張って思い出そうとしても、全然浮かんでこない。 「……分かりました。結構です」 案外簡単に諦めると、クーゲルは顎に手を当てて、考え込んでしまった。 「おいおい、お前から聞いといて「結構です」って何だよー。せめてそれが何かくらい教えてくれてもいいだろ?」 「チェルシーは……」 エクートが言い掛けて、俯いたまま、唇を噛んだ。 なんだか訊いちゃいけないことを訊いてしまったみたいだ。 「チェルシー……彼女は、私達の古い友人の名前です。だいぶ昔の話ですから、貴方が覚えていなくても当然ですよ」 エクートの言葉を継いで、クーゲルがそう説明した。
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