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私から見た彼は、優しさの塊であった。
きっと、この限られた栄養価の土地でも、彼は私に心掛けてくれる。
優しさにも飢えた土地に、私は左隣のギシギシが恋しくて仕方なかった。
私の花は満開で、運命の人がもう少しで現れていい状態だったけど、私の頭の中は、ギシギシに埋め尽くされていた。
そして、淋しさが頂点に達した時である。
「!」
ギュッと、誰かが私の背中を抱き締めてくれた。
振り向くと、綺麗にタンポポを咲かせた、私より数㎝背の高い男が引っ付いている。
私が勢いよく振り払うと、男は
「なんでこんな事をするの?君は僕のことを、ずっと待ってたじゃないか。」
と、呟いた。
その言葉に、私はハッと気付く。
この男が、私がずっと待ちつづけていた「運命の人」。
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