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男は私を、まっすぐ見つめる。
私の想像した運命の人は、もっと華やかな顔つきだと思っていた。
だが、男の顔は凄く素朴だ。
素朴だが、私にとっては、見慣れたすごく愛しい顔・・
男の顔は、左隣にいたギシギシと、瓜二つだった。
「タンポポ、お待たせ。さぁ、僕と子どもを作ろう。」
顔は瓜二つだが、この目の前の男は、彼と完璧なる偽物だ。
「なんで、そんな僕を睨み付けるの?僕は君の中にいて、成熟と共に、君の理想の相手を具現化して生まれてきた容姿の雄しべなのに。」
「・・・・。」
「まぁ、僕は君の中にずっといたから、君の気持ちは分かるけどね。」
「!」
「どうする?ギシギシに想いを馳せて、このまま受精せずに朽ちる?僕は、君自身だから、君が望むなら、それでもいいよ。」
男の意外な提案に、私はポカリと、口をあけた。
ギシギシに対する私の気持ちを大切にするなら、その方が良いのだろう。
良いはずなのに、何処と無くその決断に、モヤモヤと頭の中が曇っている。
そんな決意の曇りを晴らしたのは、目の前にいる、ギシギシに瓜二つの男だった。
「朽ちるのもいいけどさ、せっかくギシギシが助けた命を、無駄にすることになるよね。」
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