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私は、日々する運命の人の妄想をギシギシに呟きながら、運命の人をひたすら待ち続けた。
幸いにも、私がいる場所はとても日当たりや土の質が良く、順調に花をつける準備が進んでいる。
「ねぇ、ギシギシ。ギシギシは、子孫を残すことに、興味ないの?」
「・・なんで?」
「だってアナタ、根で繁殖するんでしょ?こんな育つ条件の良いところなのに、アナタの根、全然成長してないじゃない。」
「・・・・。」
「最低限の栄養しかとってないでしょ。全く・・子孫繁栄は、植物の本能で、生き甲斐じゃない。アナタは本当に、無関心ね。」
「・・関心事、あるよ。」
「えっ!?なになに、教えてよ!」
「あれ。」
ギシギシが指差した先には、ベンチに座って寄り添う人間がいた。
「人間に興味あるの?」
「うん。」
「どうして?」
「あの二人、昔はちょっと距離をあけて歩いてた。でもね、最近は手を繋いだり、頬をすり寄せたり、キスをしたり・・ゆっくり距離が近づいてるんだ。その、少しずつ近づいていく、人間特有の関係性を見るのが好き。」
「・・へぇ。」
珍しく、長く喋った彼の話しの内容は、私にとって、ただたん変わっているなと、その一言だけの感想しかなかった。
人間の子孫繁栄は、そこに至るまでに大変非効率的で、私から見たら、大変まどろっこしい行為にしか見えない。
植物のように、一目で判断し、パッと実をつける方が、見る側としてはとても分かりやすく、祝福でき、暖かい気持ちになるのに。
人間というものはどんな生き物より、複雑で分かりにくいことに、この上ない。
「あと最近、もう1つ楽しみがある。」
「え、なになに?」
「タンポポの言う、運命の人とタンポポが結ばれている所を、見てみたい。」
「えっ!?」
「植物って、ハチが花粉で運んだり、根で繁殖するばかりだからさ。動けない植物が、どうやってタンポポを迎えに来るか、興味がある。」
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