タンポポちゃんとギシギシくん

9/15
前へ
/15ページ
次へ
農薬がまかれた日の翌日、私に黄色い花が咲いた。 土以外になにもいない敷地では、私の花は、よく目立つ。 咲いた花に喜びを抱くものだが、それ以上に、静けさがます環境に、涙がこぼれるばかりだった。 左隣にいて当たり前だった、姿勢の悪いギシギシがいない淋しさに、ひたすら心が震えていた。 そして、農薬がまかれて数日後、サルビアという鮮やかな赤い花たちが、人間の手により、この地にやって来た。 彼女たちは人間に媚びており、正直、私はいけ好かず、それが態度に出てたのか、誰も私に話しかけてこなかった。 そして、私とサルビア達の他に、一つの植物が、誕生した。 ソイツは、誰よりも根を這いつくばり、土の水分を独占し、ドンドンでかくなっていき、サルビア達に嫌われている。 その植物の名前は、「ギシギシ」。 私の良く知っている、左隣にいたギシギシと違い、背がピーンと太陽の方にのびていて、誰よりも暖かい日を浴びてるはずなのに、とても冷たい顔をしている。 私がよく知っているギシギシの、3倍位身長が高く、見る限りだと、まだまだこれからも成長をしていきそうな、風貌をしていた。 彼はこれから、もっと根をはやし続け、子孫を残し続けるであろう。 そんなギシギシにサルビアは、 「やぁね、遠慮がなくて」 とヒソヒソ声で呟いていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加