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引き寄せられるように、浩二は歩き出す。
『美月』に近付くにつれ、跳ねた鼓動が高鳴った。
瞳に映る『美月』は、目も、口も、肌の色も、美月と同じだ。
違うのは髪の長さくらいだけど、最後に会った時から美月が髪が伸びていたら、こんな感じじゃないかと思う。
浩二はベンチに座る『美月』の前で立ち止まった。
呆然と見上げてくる『美月』は、やっぱり美月にそっくりで、言葉にならない感情がせり上がる。
「……美月さん、ですか?」
尋ねた浩二の声は、自分が思っているよりも小さい声だった。
『美月』は呆然としたままで、なんの反応もない。
(……しまった、聞こえなかったかも)
まわりのざわめきに掻き消された気がして、浩二は眉を下げる。
けど、もう一度言い直すのも躊躇われて、相手の出方を窺った。
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