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(ファジーネーブルって……) それは、美月がよく飲んでいたカクテルだ。 ここまで美月と同じだと、『美月』は本当に美月なんじゃないかと思えてくる。 浩二にはそれが嬉しくもあり、切なくもあった。 軽く乾杯をしたところで、『美月』が切り出した。 「改めまして、今日はよろしくお願いします」 浩二は軽く居直すと、同じように挨拶を交わした。 それから迷ったけど、浩二は『美月』になにを思われるよりも先に、謝っておくことにした。 「ごめん、最初に言っておきたいんだけど。  俺、こういった場が不慣れというか、わかってなくて、失礼なことしたらごめん」 正直に言えば、『美月』は少しだけ目を開いた。 「……ミヤサカさんは、本当にこれが最初の面会なんですか?」 「あぁ、そうだよ」 すぐに頷くと、『美月』はぐいっとファジーネーブルを飲み、グラスを置いた。
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