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(……え) 構えていなかった浩二は、思わず目を開いた。 『美月』は、驚く浩二から逃れるようにそっぽを向く。 (結婚目前で破談だなんて、マジか) それが本当なら、返答に困ってしまう。 相手に問題が? それとも『美月』のほうに? いったい、どういったいきさつでそうなったんだ? 聞きたいけど聞けずに、浩二は『美月』を見つめる。 『美月』は、平静を装いながらも、気まずそうにしていた。 (……ほら、  やっぱり人はそれぞれ、事情があるんじゃん) けど浩二は、『美月』がどうしてを打ち明けたのか不思議だった。 今みたいな話をするほど、浩二たちは打ち解けた関係じゃない。 不可解に思いながらも、妙な親近感も生まれた。 失恋の形は違えど、痛みと傷が似ている気がした。
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