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「おはようございます」
瑞希は自分のデスクに鞄を下ろしながら、部長に挨拶をした。
その足で給湯室に向かうのは、瑞希の日課だ。
現在時刻は8時39分。
独特の匂いがする狭い給湯室。
そこで熱いコーヒーを淹れると、ほっと息をついた。
(―――うん、いい香り)
コーヒー好きの瑞希は、これだけで一日頑張ろうという気になる。
タンブラーを片手に通路を歩き始めると、営業本部のドアが開いた。
そこから出てきた相手と意図せず目が合い、瑞希の心が少し揺れた。
「おはようございます」
「……おはよ」
仕方なく小さく挨拶すれば、相手も負けないくらい小さな声で挨拶を返してきた。
この相手が瑞希の元彼、飯田和明だ。
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