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(――――なんだって)
おかしいと思っていたけど、まさかそんなふうに思われていたなんて、心底驚いた。
思わずその場で足を止めそうになり、浩二の鼓動が一気に高鳴る。
謎は解けたけど、今の話じゃ、浩二は『美月』にとって、婚活の対象者ではないということだ。
「―――ちょっと待って、それ本気で言ってる?」
「こんなこと、嘘で言うわけないじゃないですか。
けど、あんな愚痴に付き合ってくれたのは予想外でしたよ。
それに、プロフィールを詐称してなさそうなことも」
焦る浩二とは対照的に、『美月』はやけにさばさばした口調だ。
それが一層、『美月』にとっての浩二は『対象外』だと示しているような気がする。
(まじかよ……)
軽く頭痛がしてきた時、蔦に囲まれた洋風のビルが見えた。
「あ、ここです。
一度ここのガレットが食べてみたかったんですよ」
『美月』は、浩二のことなんて気にしていない素振りで、白いドアを引いた。
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