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「コーヒーふたつと、バニラ・オレのクレープをひとつ」 「かしこまりました」 浩二は去っていく店員の背を見つめながら、なんとなく『美月』に尋ねた。 「ガレットとクレープって、どう違うの?」 さっき広げていたメニューの写真は、名前は違えど、どちらも同じように見えた。 「生地が違うんです。 ガレットは生地がそば粉で、クレープは小麦粉なんですよ」 『美月』が説明すると、浩二は「ふうん」と気のない返事を返す。 「けどさっき、ガレット食べたいって言ってなかった?  頼んでたのクレープだよね」 「……いいじゃないですか。メニュー見て、気が変わったんです」 『美月』は眉間にしわを刻むと、「やっぱりミヤサカさんは意地悪ですね」と言った。 その表情を見て、浩二は僅かに「しまった」と思った。 揚げ足をとるつもりじゃなかったけど、また『美月』の機嫌を損ねたかもしれない。
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