50/77
前へ
/399ページ
次へ
だけど、やっぱりあんなことを言われて、いい気がする人間なんていない。 瑞希みたいな人を探してたなんて言っていたけど、実際の瑞希と理想との差に、失望しているはずだ。 だからもう、今日でミヤサカとは終わりだろう。 それなら最後に、答えの出ない問いを尋ねてみたかった。 ―――いや、違う。 聞いてみたかったんじゃない。 いままで誰にも言えなかった苦しみを、誰でもいいから聞いてほしかった。 しばらく黙っていたミヤサカは、やがてぽつりと言った。 「付き合ってるのが辛かったって、言われたんだ。 ……その意味が知りたいの?」 瑞希は項垂れてしまいそうな首を、縦に振った。 「自分じゃ、いくら考えてもわからないんです どうしてそんなことを言ったのか、わからない」 小さな声は、わずかな余韻を残して、重い沈黙へと変わった。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4688人が本棚に入れています
本棚に追加