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和明と付き合っていたことは、社内でだれも知らない。 『噂でもたつと、仕事に支障が出るだろ』 和明に言われた言葉に、瑞希は納得して隠していたからだ。 その一方で、社外での交際は順調だった。 付き合って二年で両家の顔合わせを済ませ、式の予定も今年の夏に決まっていた。 たしか、あれは去年の暮れだった。 『そろそろ、会社に言う?』と尋ねると、和明にひどく苦しそうな顔をされた。 その理由を、当時の瑞希はタイミングが悪かったんだと思ったけど、後になって違ったんだと知る。 年末で互いに忙殺されていたし、和明の煮え切らない態度にもまぁ納得していた。 けど、年が明けて殺人的な忙しさから解放された時、そろそろ報告すべきと思った。 丁度そのくらいに、和明から『話がある』とメールが届いた。 タイミングを見計らったような連絡に、てっきりその話だと思い込んだ瑞希にとって、和明に振られるなんて、まったくの予想外だった。
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