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ミヤサカは、瑞希を見つめたまま口を開かない。
(なんで、なにも言わないのよ……)
瑞希の心に、苛立ちではなく不安が広がる。
同時に、ミヤサカが話を聞いてくれることを期待していたんだと、瑞希は気付いた。
リュウジの愚痴をぶつけた時のように、ミヤサカは適当に話を聞いてくれる。
無意識にそう思っていたけれど、そんなのは勝手な思い過ごしで、今思えば、あの時だけが特別だった。
瑞希の愚痴はミヤサカにとって、顔が見えない相手の、赤裸々な話。
瑞希にとっての喪女ブログみたいなもので、目新しくて面白くて、気まぐれで相手していただけかもしれない。
瑞希は小さく息をつく。
気まずいのは、深く考えずに話してしまった自分のせいだ。仕方がない。
それならせめて、相手の都合がどうであれ、胸に残っている靄だけは、吐き出してしまいたかった。
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